2021.05.04

THC PRODUCTIONS MAG Vol.3

サルツマンロード

ハイキングで言うなら高尾山、 ロードバイクで言うならヤビツ峠、 そんなグラベルの名所がポートランドの街中から自走で30分の距離にあるとするなら?


サルツマンロードは1893年にポートランドの尾根とも言うべきスカイライン・リッジ付近に邸宅を構えたピーター・サルツマンにちなみ名付けられました。 現在ではスカイライン・ ブルーバードとウィラメット川沿いの幹線道路を東西に繋ぐグラベルロードのことを差す場合が多く、忙しいポートランディアが朝夕に短いグラベルライドを楽しんだり、週末に家族でハイキングに行くなど、ポートランド市民から愛されています。


路面はメンテナンスが行き届き、極めてスムーズです。また、ピークのスカイライン・ブルーバードまで緩やかな斜度で、特筆すべきは折り返して別ルートでのダウンヒルはMTBerでさえも満足させるテクニカルなシングルトラックだということです。筆者のバイクは38Cとある程度の太さを持つグラベルキングSKと、GRXのディスクブレーキの組み合わせでなんとか無事下ることができましたが、あまりの振動でハンドルに装着したGoProが下を向いてしまう始末で、グラベルバイクで下るシングルトラックとしてはやや限界を超えた 難易度だと感じました。このサルツマンロード以外にも、スカイライン・ブルーバードより東の一帯はフォレストパークという公園になっており、多くのグラベルロードやトレイルが縦横に走っています。

なので、時間が無い場合はサルツマンをピークまで行って折り返すと登りは追い込み、 楽しんで下ることができ、ある程度時間が確保できるなら、 グラベルを繋いで北上していくと数十kmのロングライドをすることも可能で、 これがポー トランディア達を魅了し、 彼らにグラベルバイクを買わせる理由でもあるのです。

動画でもぞうぞ

今回紹介した3ルートは TKC ProductionsのYouTube チャンネルで詳細にレポートしていますので、 ぜひチャンネル登録ください。

https://www.youtube.com/user/tkcproductions

ACABとはAll Cops Are Bastardsの頭文字で、 BLM運動の中で多用されている「警察はクソ」 という意味なのですが、 美しい森の中でこのような生々しいポリティカルな落書きを見ると少したじろいでしまいます。
刻まれた轍の多さ、踏み固められて超絶スムーズになった路面に、ポートランドのグラベルバイクシーンの深遠さを見ます。

レイクタホ

本来ならここで GRINDURO SHIN” ETSU JAPANの話でも書いたのでしょうが、 2月に早々と中止が決定され、当時は5月なら新型コロナもすっかり収まっているだろうし、決断が早すぎる、なんてちょっとだけ思ったのですが、改めて振り返ると極めて妥当な判断だったことになります。

今年のGRINDUROカリフォルニアはマウント・シャスタに舞台を移し9月に開催される予定だったのですが、当然それもキャンセル、来年まで持ち越されることになりました。 日本でも来年に開催されることを祈り、(2021年11月開催予定) 2019年にレイクタホに行った話をしたいと思います。


GRINDUROの会場から90分ほど南東に走るとレイクタホという湖があります。そのど真ん中には南北にカリフォルニアとネバダの州境が走り、 北米最大の高山湖の水面は標高1897mに達します。

この地域一帯は不思議なことに伝説的なMTBerを多く排出しており、 サウス・レイクタホからはショーン・パーマー、そのネバダ側の隣町からはポール・パサゴイティア、 グレッグ・ワッツは物価が高くなりすぎたサンタクルーズからネバダのカーソンに移住し、バックヤードにトレイルを制作中です。そして忘れていはいけないのが同じカーソン出身のキャメロン・ジンクです。

MTBライドの環境も大変素晴らしく、湖の北側に位置するトラッキーというカリフォルニア側の小さな町にはNPOによる小さいながらも素晴らしいバイクパークがあり、すぐ西側にはアクションスポーツの聖地として名高いウッドワード・タホがオープンしました。冬はスキー場ですが、サマーシーズンにはバイクパークとなり、その麓には巨大なスケートパークが設置され、ー部はインドアなので冬でも楽しめます。

トラッキーのすぐ南側の、レイクタホとの間に横たわる峠に作られたのがノーススターです。いわゆるカリフォルニアの高級な保養施設なのですが、冬はスキーヤーにスノーボーダー、夏はマウンテンバイカーで賑わいます。 最近は試乗型のイべントに特化していたインターバイクもここでイベントを開催していますし、北米の大手自転車ブランドも新車のプレスローンチを開催するなど、とにかく北米のMTBシーンを語る上で絶対に外せないのがレイクタホのエリアなのです。


パークの紹介が読きましたが、 本当に素晴らしいのはトレイルです。 全米のべスト・トレイル上位に必ず紹介されるのがCZトレイルの記事で軽く紹介したフルームトレイル。19世紀後半、銀を採掘するために必要な木材を切り出し、それを運搬するために掘った水路が今ではトレイルになっています


皮肉なことに、 レイクタホ東側の山は過剰な伐採のためハゲ山になってしまい、20世紀の植林により今の姿を取り戻した人工林であるため自然保護地区に指定されておらず、MTBがトレイルを走行できるのです。

レイクタホ北東部にフルームトレイル・バイクというショップがあり、 オーナーはMTBレジェンドのマックス・ジョーンズです。 MTBのシャトルサービスを行っており、山頂でドロップしてくれ、そのままショップまで走って戻ってくるという、ライドを簡単にしてくれるソリューションを提供してくれています。


季節外れの寒波が来たせいで、 9月末に大雪のトレイルを走るという希有な体験をしましたが、 例年であればも う少し走れるトレイルが多くあり、 フルー ムトレイル以外のバリエーションも豊冨です。

しかし、 レイクタホの本当の見るべき場所はトラッキーのドナー記念公園です。
是非 Wikipedia で「ドナー隊」の記事を読んでみてください。