おじさんのEroica BRITANNIA 参戦記

 

名古屋カトーサイクルの店主、
加藤安弘さんのエロイカ ブリタニア参戦記。

お客さんから親しみを込めて「おじさん」と呼ばれ慕われ、74歳にして世界中を自転車で走り回る姿は本当に若々しくエネルギーに満ちています。
お店の2階には「おじさんの部屋」では、ものすごい物量のヴィンテージバイク、オールドパーツに圧倒される。
エロイカはただのノスタルジーを求めるイベントでなく、「自転車を楽しむ」という原点に返れるイベント。そんなエロイカブリタニアに、BROOKSのツアーで参戦。
スチールバイクだけでなく、最新のカーボンバイクを含むあらゆる自転車を楽しんできたおじさんは、「スチールバイクに乗って楽しむなら、まずはカーボンバイクに乗って自転車に乗れる体を作ってからにする事も勧めている」と、本当に深いところでヴィンテージバイクを楽しんでいます。

世界中を走り、自転車の歴史、バイク、パーツの見識に深い「おじさん」のエロイカブリタニア参戦記です。

B1866訪問

日本からロンドンに、三人と自転車を入れた箱が三つ、大きめのタクシーを捜す。
中心街は平日というのに、人で溢れている。

到着したホテルから歩いて、もうそこにBROOKS直営店、古い石造りのビルの並び、歩道を歩いて程なく、入口の頭上に書かれた金色のB1866文字、ここだ!

重厚な構えの中はカラー豊かな世界、サドル、カバン、ウエアーや、数々の用品や小物類、柔らかいスポットの光に整然と飾られている。どれも親しみ易い優しい色。
新しいカバンなど、より使いやすくなっている。

BROOKS工場見学

あくる日、BROOKSツアー全員大型バスに乗った。
行き先はイギリス第二の都市バーミンガム、言わずと知れたそこはBROOKSの工場の所在地だ。
大型バスが門の中に、レンガ造りの建物が並び歴史そのまま。

ポスターなど飾られた事務所から班に分かれ工場へ

中は動いている鉄の線状の巻いたものから、見る見るうちにサドルのベースやバネなどが現れ、そこからも大きな機械で曲げたり、くっつけたりで、いろんな型の金属部分が出来あがって行く。
どれもその工作機械はしっかりして古そうな、オリジナルなのか、四角の枠にBROOKSの刻印が埋め込まれている。

隣りの皮工作部に進むと平ペッタイ大きな皮が、くびれたサドルの形が、ポコンポコンといくつも抜かれて穴ぽこだらけ。 そして成形され金属ベースと無事合流。 鋲を器用に打つのは人間、工作機械は小さくなって、金づちやナイフとかで、どんどん人間の技が最後の仕上げに向かって行く。

エロイカ・ブリタリア

イタリア・トスカーナ地方で、最初は少人数で行われたとされる旧い懐かしい自転車の祭典。
おじさん達を中心に女性や若者や子供たちも、昔の走り方で、自転車も、走るスタイルも、気持ちも…
そこは、自然豊かな起伏ある緑豊かな、野山の道、主役は自転車、そのぺタルに力を込め、ハンドルは出会いという、未知の世界に向かう。イギリスでの「エロイカ・ブリタリア」は今回で二回目。今年で三回の日本より一年遅く、でも参加者もスケールも、桁違いに凄いらしい。

開催地はのんびりした風景が広がるピーク・ディストリクト国立公園の中心地、べークウェル。 北イングランド特有の荒れ地と谷の景観が有名で、歴史的建築物も数多く残っているのも人気と紹介されている。 トレッキング、ハイキング、サイクリングなどに沢山の人々が楽しんでいるようだ。
この頃、特にロードレーサーは、カーボンフレーム等超軽量車を追い求め、余りにも近代的。 今から30年余り、より以前、数々のクロモリフレームのロードレーサーが製作者の美しい工作で、ブランドに誇りを持って、それぞれ特徴の相応しい部品で組まれ、オーラに輝いていた頃。

あの頃走った、汗と想い、そんな自転車との生活をもう一度呼び起こし、ここで、そんな仲間と一緒に走り、楽しむのだ。

昼食後、いよいよベークウェルへ、先ずは街の郊外レンガ造りのコンドミニアム風のホテルに旅の荷物を置きエロイカ会場へ。
何本かの道が集まった街は高台の教会の塔がほぼ中心にあって、まわりの商店のショーウインドウにエロイカのポスターや自転車などが綺麗に飾られて、歓迎ムードにあふれている。駐車場から会場に向かう人が列になって向かう。
そこは、なんて広く大きいのだろう。長い柵に囲まれた中に、白いテントがずらりと何列も広く長く奥へ、入口も中も、人また人。

自転車を介してのお祭りにこれほどの規模とは、入口から何列も奥に、用品、アクセサリー、衣料、パーツなど、それぞれテントの下に並べられている。

特に向かって右の列にビンテージ物のパーツや何台かの自転車重ねられ、まだ奥に続いているらしく、思わず足が向く。

中古の旧いアルミボトルは数万円?旧いサドルは皮に傷がついているので安そうだ。

ポストカードは手頃だ、ポスターは額に入っていて持って帰れないな、そして奥には、大きな鍋に肉とか野菜と飲み物などの食べものテントが続く。
真ん中の大きなテントはレストラン。

遠く観覧車、メリーゴーランドや、小さなゴーカートなどなどの遊園地があるのに驚く。小さな赤や黄色の電気が点いたりして華やか。 今日から日曜までの三日間だけの広いお祭り広場。 舞台では音楽ライブ、その観客の前では音に合せて数人踊っている。干し草の四角な腰かけに座って休んでいたり、何かを食べている人、ピアノを弾いている人、コーラスの三人娘、干し草を広げた上で遊び寝転んだりしている子供達。

想像以上、夢のような世界が繰り広げられているようだ。 何か買いたい物など、もっとしっかり見ない内に帰りの集合時間、又、明日に…

早朝、箱から取り出した自転車をホテルから少し乗ってみる。少し冷たい空気、程よいカーブの道が広い牧場や畑の中に続いて行く。

点々と放牧の牛達がすぐ近くにも。朝食後、両替をと街の銀行へ、丁度駐車したすぐ横の旧い教会を見学し、街の銀行はなぜか両替出来なく、小さなスーパーの中の郵便局で済ます。
すぐ近くの小さなパン屋さんの佇まいに誘われ、焼き菓子買う。

大事な受付の手続きをと会場へ、一番奥のテントだ。
エロイカ記念ラベルのビールが一本、その他、ゼッケンナンバーなど入ったサコッシュを受け取る。昼食券も入っていて、肉料理のテントに向かう。床屋さんや、美容院のテントもあり、中にお客さんが数人おられるのにびっくり。

BROOKSやぺタレット、パ二アー、パーシュレーのテントも賑わっていた。

レース当日

いよいよ走る当日、お揃いのウールのジャージ。まずは、ホテルの前で集合写真。

そこから会場まで自走。でも数キロ。 街の中の道に並んで順番を待つ。 いろんな人といろんな自転車、個性いっぱい。 道はいっぱいで賑やか。

ゆっくり数十人づつ、赤い中世の服を着た係のおじさんが整理係、黒の方のおじさんが旗を振り下ろすとスタートの合図。

さあ、行くよ!これから走るミディアムルートは55マイル、どんな風景が待っているのだろう。

道はすぐに地道、車は来なく、木々の中を進んで行く。 前から突然数人のMTBの人達、ここは、トレッキングやサイクリングの盛んなエリアなのだ。

走っている道の下方の広い渓谷、森にお城みたいな家が現れそんな景色が続いている。 石造りの橋や小さなトンネルを幾つもくぐった。

やがて景色は広がり、羊や牛など放牧された広い広い丘陵地帯の道を登り下りしながら、前方に点々と走る仲間を追うようにぺタルを踏む。

エイドステーションの音楽バンドの歓迎、お城の前の広い芝生での休憩地

そしてあの大きな会場へのゴール、
みんな、イギリスらしい、素晴らしい風景の、夢のようなサイクリングでした。


L’Eroicaとは

イタリア語で”英雄”を意味するL’Eroica(エロイカ)。 1997年にイタリアのトスカーナで始まったヴィンテージサイクルイベント。
世界中から集まる5,000人もの参加枠は今やプレミアチケットに。 参加規程は1987年以前に製造されたクロモリ製のヴィンテージ自転車であること。 老いも若きも男女の別なく、その多くがウールジャージや革靴などクラシックなスタイルに身を包む。 だが、エロイカは単なるノスタルジックな催しではない。 町の遺産として残すべき美しい未舗装路を保護するという思いに起源をもつ。

Eroica 参戦記