ABUSファクトリーツアー:ヘルメット編

Made in Italy
モビスターやアルペシンの活躍で少しずつ人気が上がってきている、ABUSロードヘルメット。
選手たちが着用する、AIRBREAKER、GAMECHANGER、STORMCHASERのヘルメットはすべてイタリア製。

ドイツの開発と、イタリアのデザイン、クラフトマンシップが融合したヘルメット。
確かにヘルメットを手に取ってみるとそのクオリティの高さを感じることができるが、どこでその違いが生まれてくるのか?

今回ABUSチームがユーロバイクに併せて、2日間に分けてイタリアのヘルメット工場とドイツのカギ工場のファクトリーツアーを開催してくれたので参加!!


フランクフルト→ベニスのヘルメット工場へ
7/11 早朝フランクフルト空港近くのホテルを出発。
工場のあるイタリア・ベニスに向けて飛行機に乗り、約1時間半でベニスへ到着。
飛行機の窓からは遠くに「水の都」ベニスの街並みが見える。


ヘルメットの製造過程
ABUSのヘルメットを作っている工場へ
空港から30分ほど経ったところでバスが停止。工場に入ると、確かにそこでABUSヘルメットが0から作られていた。

ABUSのヘルメットが作られている工場へ

ヘルメットの構造は?
ヘルメットは、外側の固い部分=シェル(ポリカーボネート)
EPS(エクスパンダブルポリスチレン)と呼ばれる、密集したビーズ状のものを発泡(=膨らませて)させたものを合体させ、フレームやあごひもなどのパーツを組み合わせて作られる。
カタログによく書いてある、インモールド製法とは、このシェルにEPSを吹き込んで整形して一体化させたもののことをいうよう。

今回の2つの工場をめぐり、その全てを見ることができた。
訪問順とは異なるが製造順でご紹介させて頂きたい。


シェルの作り方
平べったい板が、シェルの形に
当たり前だが、ヘルメットのシェルを形作るポリカーボネートは、もともとは平べったい板。
真四角のポリカーボネートの板に、各モデルに合うように色やロゴデザインを印刷する。
印刷したものを見る限り、まだこの板がヘルメットの一部になるとは思えない。

印刷されたポリカーボネートシェルは、乾燥台に保管される

元印刷会社だからできる正確なグラフィック、美しい発色
シェルの印刷はすべて適正な一定の温度で管理されている。
もともとこの工場は、印刷工場だったこともあり、色の均一さ、発色の美しさ、グラフィックの緻密さに対して強いそう。
豊富なカラーラインナップと、美しい色はこんな背景から生みだされていたことが分かる。

シェルの下準備段階で既にABUSのヘルメットのクオリティの背景の一つを感じることが出来た。

各ヘルメットの形状やデザインに合わせて、色やロゴが印刷される。

GAMECHANGERの上部の”GC”ロゴが印刷されている。

立体物のグラフィックを正確にするノウハウ
スーツケースのプリントも行っているため、立体的な形状にグラフィックを落とし込んでいくノウハウが、ヘルメットのシェルデザインや成形に活かされている。

同じ工場でシェルのデザインを印刷しているため、多くのカラーバリエーションの作成が可能になる。
実際の立体物に、目盛りがたくさん書かれたシェルを整形しながらグラフィック位置を合わせていく。
収縮しながら平面から立体になる中で、その位置を合わせるのはまさに職人技。

その後、板を機械の中の型にはめて、ヘルメットの形に合うように整形する。

シートをセットして、熱を加えながら、型に合わせて吸い上げると一瞬にしてヘルメットの形に。

工程で一番おおっ!となる瞬間。

残っているシート部分が丁寧にセットされ、カットされたパーツはモデルごとに分別される。

ここまでがポリカーボネートのアウターシェルの製法。
ここからは、実際にヘルメットの重要な部分EPSを入れていく工場へ。

ABUSのヘルメットは、EPSがきめ細かく密度が高い気がする。
でもこのあたりはあまりメーカーの人も多くは語ってくれないところ。
工場で、この目で確かめることができるのか?


インナーシェルの作り方
素材のEPSって何?
ヘルメットの衝撃を吸収するEPS。
素材はビーズの形をしている。
これを集めて、ガスを吸収させて、熱を加えて、圧力を加えると膨らんでビーズ同士が融着して結合して成形される。
わかりやすい身近なものでいうと発泡スチロール。

質問してみたところ・・・
70:30の割合が逆
じつはこの部分でコストを抑えようと思うと、大きなビーズを使う方が効率はよいそう。
そうすると、ムラができたり、隙間ができてしまう。
上の写真のサイズ違いのビーズで、通常のメーカーは大きい方を70%、小さい方を30%で埋めていくそう。
ABUSはその逆で小さい方を多く使っているそう。

機械の型でEPSを成形する。中に埋め込まれるプラスチック製パーツをセッティングしている。

すべては安全のため
当然コストはあがるが、安全を守るため、そして美しさにもつながるその部分に対して妥協をしていない。
EPSのビーズはヘルメット本体の大部分に使用されるため、サイズや密度などの品質が徹底的に管理されている。

EPSのビーズが作られた後、大きな袋(箱?)に貯められ、各成形の機械に繋がっている。
その後、先程の工程で作られたシェルと、内部に組み込まれるプラスチック製のパーツ(フレーム、あごひもの接続部分)を金型にセッティング。

ヘルメット内側の金型、ここに外側の金型が迫ってきて、ここにEPSが吹き込まれて成形される。

機能を追求するとより複雑な手順に

ヘルメット外側の金型。
AIRBREAKERはベンチホールが深く、そして立体的な複雑な形状をしている。
そのため、金型も単純に外側を覆うシンプルな形状でなく、いくつもの金型を組合わせて複雑な形状をしている。
これもコストはかさんでしまうが、涼しさとエアロ効果を両立させるため妥協せずに作り出した結果なのだ。

一つのラインでヘルメットを形作るのに、4〜5分。
1時間に休みなく作り続けても、12個ほどしか作れない事になる。
それでも、高いクオリティを保つためにはこの工程を簡素化することはできないという。

ドイツ、イタリア、さらにスイスのクオリティも
AIRBREAKERの上部やあご紐の接続箇所、ZOOM ACE(後方のフィッティングシステム)に使われているプラスチック製のパーツは、
すべてスイスで作られたものを使用。

細かなパーツ一つ一つも、高い品質にこだわって作られている。

プラスチック製のパーツはスイスで作られた高品質なものを使用

AIRBREAKERは、内部のデザインが複雑なため、さらに多くのシェルの工程や作業が必要になる。

AIRBREAKERは、内部のデザインが複雑なため、さらに多くのシェルの工程や作業が必要になる。
AIRBREAKERは、内部のデザインが複雑なため、さらに多くのシェルの工程や作業が必要になる。

EPSとシェル、プラスチック製パーツが合わさったもの。よく見るとEPSのビーズ一つ一つが見える。


最終アッセンブル

アッセンブルと検品を兼ね備えたプロの目
ヘルメットの帽体が完成したら、あとはあごひもやZOOM ACEなどのフィッティングシステム、内部のフローティングパッドなどが一つ一つ手作業によってつけられていく。

ロゴステッカーも1枚1枚丁寧に貼り付けられていく。

時計回りに机をグルっとまわりながら、
リフレクターのシール貼り、フィッティングシステム、あごひも、バックルの取り付け、注意書きステッカー内張り、ロゴ貼り、保護シートを剥がす、パッケージ梱包…
と工程を踏んでいく。
ただの流れ作業でなく、各ステップで厳しい検品の目が光りここで最後のクオリティチェックも同時に行われる。

一つ一つの工程が机ごとにわけられ、ヘルメットが完成に近づいていく

ストラップの接合部も隈なく確認されている

GAMECHANGERにABUSのロゴを貼り付けている。平ではない表面に確実にまっすぐステッカーを貼っていく。

出来上がったヘルメットはスケールに乗せて重さをチェック


1つのヘルメットができるまでたくさんの”手”が

ここまでヘルメットの製造過程をお伝えした通り、1つのヘルメットができるまで最低でも10人(それ以上かも)の手の中を通ってきている。
また、安全性、性能を追求するため妥協のない素材選び、製法、品質管理を行っている。
各工程の、それぞれがプロフェッショナルの目を持っており、それがABUSの高品質につながっている。

込められた思い
ABUSの工場で働いている方々は皆、作業をしている途中にもかかわらず
パーツの組み合わせやシェルの切り方を見せてくれたり、わざわざパーツを取り出して近くで写真を撮らせてくれてとても親切だった。
ABUSのロードヘルメットが私たちの元に届き、着用してサイクリングやトレーニングを楽しむまでには、
今回出会ったようなABUSチームの人たちはもちろん、製造の現場で働いている方たちの思いがヘルメットに込められているのだと強く感じた。


ABUSが目指す未来
今回ご紹介したイタリアの工場では、EPS(ヘルメットの素材)やシェル(ヘルメットの外側部分)が作られていた。
すべてイタリアで作られているということは、品質のチェックやコントロールも一貫して同じ場所で行えるということ。
それは製品自体の品質を高い水準で保つために非常に重要である。

今後、今は3ヶ所にある工場を、1ヶ所に集約して、より効率よく、高品質なものづくりができる体制にむけて動いているそう。
100%イタリアでハンドメイドで作られているABUSのロードヘルメットが、
世界や日本でさらにその勢いを伸ばしている理由、
カタログだけでは伝わりきらない高品質な製品の背景を確信できる1日だった。



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